2006 |
09,06 |
人殺しが嫌で里を抜けた、
そういえば多少聞こえはいいが、実際のところは唯人が煩わしかっただけ。
命令されて、命令して、怒って殴って殺して、
あーもうどうでもいいや、って思ったときにはもう体は動いていた。
それから山奥の小さな小屋で、サバイバル生活。
幸い文明的な生活よりも、原始的な生活に慣れていたから、その生活に困ることはなかった。
でも、何か足りない。
――――人だ
里を抜けて、もう戻れなくなって気付いた。
笑い合って、励まし合って、声を掛け合える人間は、本当は大切な存在だったのだ。
そう思った矢先、人を忘れかけた殺伐とした生活の中に、一人の人間が転がり込んできた。
「はたけカカシさんですか?」
殺気を発さない、まるで何も考えていないような人。
それでも木の葉マークの額宛をしていたから、すぐに追い忍だと分かった。
けれど、正直捕まろうが、拷問されようが、もうどうでもよかったから、素直に頷いた。
「そうですけど、なにか」
「一応追い忍なんですけどね、」
モグモグと言い難そうに、口を動かした。
「・・・一緒に暮らしませんか?」
そのたった一言に驚いたのは言うまでもない、開いた口が塞がらないとはこのことだ。
どうせ里が仕向けたものだ、おれを更生しろとか何とか言って。
本当に嫌なら殺しても構わなかった。
けれどそこで再び頷いてしまったのは、人が恋しかったから。
そしてどうしてか、動くたびにピョコピョコと揺れる、その黒髪が気になったからだ。
いつ殺されるか分からない生活も、スリルがあって楽しそう。
なにより、この部屋も少しだけ、人の匂いがするようになるかもしれない。温かさを取り戻せるかもしれない。
会ってすぐなのにおれは、自分の一生をこの人に賭けてみよう、そう思った。
それから、奇妙な同居生活が始まった。
to be continue...