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思いついた妄想をつらつらと・・・
2025
05,29

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2009
02,27

幼い頃の記憶は、歳をとるにつれ薄れていく。どうでもいいことから、どんどんと。

けれど僕の中で、その記憶だけはいつまでも鮮明で、まるで昨日のことのように思い出せる。

もし僕が記憶をなくしても、この思い出だけは消えないだろうと思ってしまうほど。

 

それはルルーシュと出会って、間もない頃だった。第一印象は最悪で、その頃もまだ彼を理解できていなかったが、ルルーシュをからかうことの面白さや妹のナナリーの存在もあり、学校の友人を差し置いて毎日二人の暮らす土倉へ足を運んでいた。


「おいルルーシュ!!」

「なんだスザクか、静かにしてくれ。今ナナリーが寝てるんだ」

 

スザクが大きな扉を開けて興奮気味に、そこにいるはずのルルーシュに話しかけると、話しかけられた当の本人は冷静に言った。

そういえば夜だった、とスザクが思い出したように言ったのは、興奮して早くルルーシュに伝えたくて走ってきたからだった。

ルルーシュはスザクの言葉を聞くと目を丸くして、ため息をついた。

 

「昼か夜かも見分けがつかないのか、呆れたな」

「ちげぇよ!ちょ、ちょっと周りを見なかっただけだ!」

「同じようなものだろ。それより、用は?」

「ああそうだった!今日は星が綺麗なんだ!一緒に見に行こうぜ」

 

そう言うと、ルルーシュは一瞬目を輝かせた。

 

「星か…」

「なっ!見に行こうぜ!」

「でもナナリーが」

 

ルルーシュは寝ているナナリーを見遣り首を振った。行けない、と小さく首を振る。スザクもナナリーを見て、呟く。

 

「そっか、そうだよな…。…なら、ここから見よう!」

「ここから?でも窓なんて」

 

ルルーシュたちの家もとい土倉には、子供が遙か見上げるくらいの位置にある小さな窓しかなかった。

眉間に皺を寄せるルルーシュを、スザクは満面の笑顔で見た。

 

「窓なんか、作ればいいんだ」

 

そう言ってスザクは大きな扉へ向かう。思い扉を、片方、もう片方と大きく開き固定すると、そこには闇に浮かぶ幾千の星が現れた。

 

「まだ少し寒いけど、ちょっと我慢して」

 

扉を開け終え振り返ったスザクが見たのは、目と口を大きく開け、夜空を見上げるルルーシュの姿だった。

その表情に、スザクは胸がいっぱいになるのを感じた。

 

「な!綺麗だろ?」

「ああ、とても…ナナリーにも見せたいな」

 

ルルーシュはちらりとナナリーを見、眉を寄せた。

「見えてるよ。だって、ルルーシュも俺も、ナナリーの目なんだから」

 

ルルーシュはスザクの顔を見て、微笑んだ。

 



何年経っても忘れやしない。互いの立場が変わっても、忘れられない。

決して薄れることのない記憶。

僕はルルーシュの微笑みを見て、僕らの出会いが間違いではないことを知った。その微笑みは、僕が作り僕だけに向けられたものだと。

綺麗な思い出と共に蘇るのは小さな醜い、独占欲だった。

それでも僕はこの思い出を、何よりも大切に思う。僕らが離れても、思い出は綺麗なままだから。

 

部活帰りに見上げた空には、あの日と同じように闇に包まれていた。けれど星は見えない。

前を見ると、遠くに見間違えることのない背中とオレンジ色の揺れる髪の毛がある。

僕が決してたどり着けない、いることの許されない、彼の隣。

アメジストの瞳は、どのように彼女を見つめているのだろう。

あの綺麗な思い出のように微笑んでいなければいいと思った。

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