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思いついた妄想をつらつらと・・・
2025
05,31

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2006
09,17

 イルカ先生の部屋には何もない。
 おれの部屋も、よく殺風景とは言われるが、この部屋は殺風景を通り越している。
 でもおれは、この部屋が好きで、よくこの部屋でのんびりする。
 そんなときはいつも、イルカ先生は書類にテストの答案に、とにかく仕事に、格闘している。
 今日も、イルカ先生は赤ペンをもし、一定のペースで手を動かすんだ。

 今イルカ先生が向き合っている答案の持ち主は、どうやらペケが多いみたい。
 こんなこと言ってはなんだけど、おれはマルよりペケのほうが好きだ。
 単純に、イルカ先生の手の動きが好きだから、なんだけど。
 そんなこと考えながら、手に持ったイチャイチャパラダイスもそこそこに、イルカ先生の手をじーっと眺め続けた。

「あなた何してるんですか」

 唐突に降りかかる声。
 その声と同時に、ペンの動きは止まった。

「ああ、気にしないでください。手、動かしていいですよ」
「気になるんです、言ってください」

 イルカ先生はそう言って、ペンを投げ出した。
 理由を言わないと、もう動かしてくれそうにない。

「見てるんですよ」
「なにをですか?」
「動きを。おれはペケをつけるイルカ先生の手が好きですねぇ」

 笑いながらそう言うと、イルカ先生は呆れたように怒ったように言った。

「・・・構ってやらないこともありません」

 ビックリしてイルカ先生を見ると、耳を真っ赤にして、俯いていた。
 そこで気づいた。
 おれがイルカ先生の家に行くと、いつも仕事をしている理由。


 どうしていいか、分からなかったんだね
 二人きりでいる、この空間に戸惑って、話しかける、そのきっかけに悩んで。
 近い距離にいても、実は遠い距離にいたとか、今はどうでもいい。
 こうしてお互いが同じように悩んでいたことが、なぜか嬉しい。
 おれのために悩んでくれていたなら、もっと嬉しい。
 考えていたらおかしくなって、おれは思い切りイルカ先生を抱きしめた。

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